やっくん from ライトニングデリバーズ
俺が働いているセレクトショップに偶然にも買い物に来てくれたのがやっくん。ライトニングデリバーズというバンドを長年やってるパンチの効いた音楽好き。気にいったキャラクターの強い古着を絶妙なバランスで着こなす彼のルックスは簡単に真似できない。そもそも服を着る行為に対して彼ほどカルチャーを詰め込んでる人にはなかなか出会えないだろうとも思う。
そんな強烈な印象が残るやっくんに初めて出会ったのは4年前の夏。当時俺が憧れた人たちがこれまたイカした女性イベンターによって集合し、定期的に開催されるイベント。目的とするバンドには勿論、そうでないバンドにも俺はただでは帰してもらえず、怖いくらいパワーのあるイベントだった。そのイベントによく出演していたバンドの一つがライトニングデリバーズ。
いつもはサイケデリックマーダーショーというタイトルで開催されていたのだが、イベンターの千里さんのこだわりからかその日は違うネーミングでのイベントだった。
"三途ディスコ"
この日、俺は出演バンドのあまりの音圧に耐えきれずぶっ倒れてしまったのを覚えている。この体験をして以来、漫画デトロイトメタルシティに出てくる台詞にある
「音楽は人を殺れる」
がギャグに聞こえなくなってしまった。
その日は打ち上げにまで参加させてもらい、何度も言う憧れの方々とナンを頬張った。その時話したのがやっくんとのファーストコンタクト。パンチの効いた印象とは違い、気さくで優しい人だった。そう、この界隈の方々には憧れが強すぎて当時、俺はそもそも人間を相手にする面持ちではなかったような気さえする。
何処かで見かけることはあってもしっかり話したのはこの時以来だった。場面は俺の働いているセレクトショップに戻る。
「ライトニングデリバーズの方ですよね?」
「はいはい、そうですよ〜」
現在は体制が変わりやっくんはボーカルを務めているが、俺の記憶に残るやっくんはドラマーだった。俺が組んでいるバンド、Seethrusはドラム不在の中でベースがドラムを叩いていたような状況。無理だろうなとは思いつつも偶然の再会からやっくんにドラムを叩いて貰うようにお願いすることを思いついた。
「ドラムが不在なのですが、サポートをお願いできませんか?ダメ元で連絡させてもらいました!」
「楽しそうじゃん!!」
あっさり決まった。
初合わせの時、呑んで現れる彼にニヤリ。
見た目通りパワフルなドラミングにニヤリ。
思いつきでカオスパッドを持ち込んでくれたり、知らない音楽を沢山教えてくれたり。
下手したら我々よりもバンドの方向性を理解してくれていたし、自分たちのやることを信用してくれていた。
特に音楽の面白さ、楽しみ方は彼とバンドをやってどんどん広がっていった。スタジオの入り方も少しずつ変わっていき、シビアな音づくりも習慣付いた。我々が現在音づくりにおいて苦戦し、試行錯誤しているのも彼の影響。この葛藤はゆくゆくは良い方向にバンドを導いてくれるはずだと思っている。
何より俺が嬉しかったのは俺が作る曲をやっくんが好んで演奏してくれていることだった。デモ音源を聴いて貰う度に
"この曲のポテンシャルは高い、そうでもない"
"ここをこうすればもっと良い"
"この曲はこういうアプローチが合うと思う"
が出てくる。
多くのジャンルを網羅している彼なので作る曲のジャンルの振り幅がデカい俺を受け入れる皿を持ってくれていた。
こういう曲調は苦手だな
やりたくない
良いと思わない
これらが一言も出てこないって凄い。
音楽を楽しむということを意識すること自体が彼と演奏するようになってからかもしれない。例え自分が作った曲だとしても自分で理解できていないこと、曲に対しての技術不足、曲に必要な音がバンド単位で分かっていないなと思うようになった。楽しむために必要なことが出揃ってないから苦しい。逆にこれさえ手に入ればライブは楽しむだけ。無駄に考え込んでいた音楽以外のことを取っ払いたいと思うようになり、その反面で当たり前のことを理解するのが俺たちには凄く難しかった。大袈裟に聞こえるかもしれないし、これを読んだらやっくんは笑ってしまうと思う。でも未熟な故、学んだことが多くて彼を褒めるばかりになってしまう。そして、軽く近状を書くつもりがつい長くなってしまうのはご愛嬌。
ライトニングデリバーズの活動の本格化、我々も次へ向かうために水面下で動いていた兼ね合いからやっくんはSeethrusを離れます。
単純で難しいこと、シンプルなのに複雑で難解なこと、次に繋がることばかりで感謝しかないです。今は美味い飯と酒を何時、何処でってことしかお互い考えていないと思いますが。
でも色んなことができる人なので面白いことは未だに思いつくんですよね。サポートで参加してもらってカオスパッドだけ鳴らしてるとか笑